「Show Time」
沈み行く夕日に照らされ、徐々に深く染まる夕暮れ時の世界。
わずか数分の間に、様々な表情を移り代わりに見せてゆく光景は、
僕たち人間を観客に、自然の競演が魅せてくれる”ショー”だ。
この日は、梅雨空の合間に恵まれた晴れという、貴重な舞台。
翌日からの天気予報は、また傘マークがずらっと並んでいた。
「梅雨が明けるまで、またしばらく夕焼けともお別れかな・・」
ふとそんなことを考えると、僕は心持ち切ない気持ちに駆られる。
すると、そんな僕の心を察してか、風がなぐさめるように優しく吹くんだ。
「明日への香り」
”また明日”。
夕日はそう告げると、姿が見えなくなるその時まで、僕たちへ手を振り帰ってゆく。
そんな夕日が残していった、”明日への香り”を胸いっぱいに吸い込むと、
僕の心は明日への期待感で満たされた。
「撤収」
夕暮れのショーも終わり、観客は家路へつこうと、次第に準備を始めてゆく。
そんな時、僕は「あ・・!」と、あることを思いつき、足早に細いあぜ道を駆け下りた。
そして、後ろを振り返ると、シャッターボタンに指を置き、慎重にその瞬間を待つ・・
自分の中で失敗は許されないと思ったカット。
残る集中力のすべてをこの瞬間、僕は指先に託した。
「余韻に浸って・・」
ほとんどのカメラマンが撤収をしてゆく中、呆然と立ち尽くすカメラマン。
その後姿には、余韻に浸りつつも、どこか名残惜しそうに想う気持ちが見え隠れする。
そんな後姿に誘われるように、僕もまた余韻に浸った。
”明日への香り”に包まれながら・・
【完】
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